子どもの医療制度の在り方等に関する検討会 議論の取りまとめ(案)

第5回子どもの医療制度の在り方等に関する検討会が開催され、議論の取りまとめ(案) が資料として提示された。
最近報道された子どもの医療に関する国保の減額調整措置の一部廃止については明確な言及はされていない。

議論の取りまとめ(案)

 

議論の取りまとめ(案)

1、子どもの医療のかかり方

限られた小児医療の医療資源を適正に利用し、医療機関への受診の必要な子どもが適切な医療を受けられるようにするためには、子どもの急な体調の変化に対して、夜間・休日といった診療時間外や救急における医療のかかり方に対する保護者の理解を向上させることや、保護者の不安を解消することが重要である。こうした受療者に働きかける施策として、現在、地域の保健師等により行われている保護者への情報提供や啓発活動、小児救急電話相談事業(#8000)等の取組の一層の普及を図るとともに、診療の現場において医師から保護者に対して子どもの状態に応じた受診の在り方を説明することは有効であることから、小児科のかかりつけ医機能を充実することが重要である。

2、子どもの医療の提供体制

小児の医療提供体制については、重点化・集約化が進み、保護者への啓発等とあいまって、小児科医の勤務環境についての理解が進んできている。今後とも、小児医療へのアクセスに留意しつつ、特に高度先進医療を含めて更なる集約化を推進すべきである。同時に、地域包括ケアシステムのコンセプトを子どもの医療にも広げ、小児医療の中核を担う医療機関と地域の小児科のかかりつけ医等の連携をはじめ、医療・福祉・保健・教育等の多職種が連携しチームで対応していくことが重要である。
また、医療の進歩により小児の死亡率が減少し、障害や慢性疾患を持って成人に移行する子どもが増えている中で、小児の在宅医療の充実や親のレスパイト(親の一時的な休息のための援助)など、医療的ケアが必要な子どもを地域で支援する体制を構築することが必要である。
さらに、必要に応じて福祉事務所、児童相談所、子育て支援機関、医療機関等の関係機関と連携し、妊娠期から子育て期にわたるまでの様々なニーズに対して切れ目のない支援を行う子育て世代包括支援センター(日本版ネウボラ)の整備、医療提供側から児童虐待を防止する仕組みの導入等が重要である。

3.子どもの医療に関わる制度

我が国は世界で見ても乳児死亡率や新生児死亡率が最も低い国となっているが、こうした世界最高の保健医療水準を支えているのが子どもや妊産婦も対象となる国民皆保険制度である。
国民皆保険制度の下、子どもの医療費の窓口負担については、義務教育就学前は2割、就学後は3割とされているが、子どもと保護者が安心して医療機関を受診できるよう、地方自治体が少子化対策の一環として地方単独事業によりさらに軽減措置を講じている。現在、全ての自治体で何らかの形で実施されているが、対象となる子どもの年齢や医療費の範囲、所得制限や一部負担の有無など、その内容は自治体により様々であり、近年、自治体間で対象範囲の拡大に向けた競争が激しくなる傾向にあり、統一的な基準を示す必要があるとの声も高まっている。
一方、こうした減免措置により生ずる医療費の波及増分については、国により国民健康保険制度において国庫負担を減額する措置が講じられているが、これは、減免措置の実施の判断は地方自治体において独自に行われる形となっていることから、その波及増分については、限られた公費の公平な配分という観点から、当該自治体が負担すべきとの考え方に基づくものである。
この子どもの医療に関する国保の減額調整措置については、本検討会でも賛否両面から様々な意見があったが、「一億総活躍社会」に向けて政府全体として少子化対策を推進する中で、地方自治体の取組を支援する観点から、早急に見直すべきとの意見が大勢を占めた。
その際には、
・医療費無償化による受診拡大等が医療保険制度全体の規律や医療提供体制に与える影響
・負担能力に応じた負担とする視点や過度な給付拡大競争の抑制
・小児科のかかりつけ医の普及、保護者等への啓発普及、他の子育て支援策の充実など併せて取り組むべき事項
・必要となる公費財源や財源の有効活用など財政再建計画との整合性
等の観点を踏まえつつ、検討を行うべきである。

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