阿部知事との懇談 (記録)

3月29日に福祉医療の窓口無料化について阿部知事との懇談した。
以下に懇談録を記載した。

福祉医療の窓口無料化について阿部知事との懇談日 時:2012年3月29日(木)午後2時30分?3時

場 所:県庁3階第3応接室
出席者:
(県)阿部県知事、県健康福祉部健康福祉政策課長
(福祉医療制度の改善をすすめる会)
坂本会長、平川事務局長、原県推協事務局長、小林新婦人長野県本部会長、高橋(新婦人長野県本部)、山口(新婦人長野県本部)、竹田県推協事務局次長、湯浅社保協事務局長、唐澤民医連事務局次長、宮沢保険医協会事務局長、
(長野県平和・人権・環境労働組合会議)
  高橋議長、喜多事務局長
(議員)
竹内久幸県議会議員
平川事務局長:今回懇談の橋渡しをしていただいた竹内県議より一言お願いしたい。
竹内県議:本日は子供障碍者等窓口無料化を求める要請書ということで福祉医療改善を進める会と平和人権労組会議のみなさんが願いを実現するためにこの間署名活動を行ってきて、お手元にもあるが、43,491名の署名をいただいたということで、署名を添えて様々な論議が行っていますが、各県の格差が広がってきたのを踏まえて何らかの方策をいただきたいといった趣旨でお願いに上がった。それぞれの方々からお話があろうかと思うが、ぜひ前向きなご回答をいただくようお願い申し上げ簡単ですがごあいさつにさせていただきます。
平川事務局長:会長の坂本より要請書を知事さんに提出したいのでよろしくお願いします。
(署名提出)
坂本会長:本日の趣旨だが大きく言うと障碍者の医療費に関して窓口で払うのを無料にしてもらいたい。もともと無料だったが、諸般の事情で3割負担ということで後から戻ってくるからいいじゃないかというが実際3割を窓口で払うというのは大変厳しい。前の田中知事が知事になるときに障碍者の医療は無料にしたいということを公約されたので非常に大きな期待を持った。ところが、いざ実施する段になると県内の市長会と町村会からいろいろと話があってまったく無料にするわけにはいかないということでとりあえず300円を払ってもらいたいと長野県独特の方式を作った。いまでは500円に上がっている。二つ問題があり、ひとつは、いわゆる医療を受ける側の私たち障害の当事者とか家族の意見を反映する場がない。受ける側の意見は全く反映されないで決められてしまった。私たちの声を聴いてほしいというのが一点。もうひとつは障碍者といってもほとんどが年金暮らし、6万円よくて8万円。家賃を払って、食費を払ってなおかつ医療費となると大変だ。後から帰ってくるからといっても、現金がなければ医療にかかれないといった非常に厳しい状況にある。この2つの点についてはぜひ改善してほしい。このことが言われだしてから時間がたっており、全国の県や県内の市町村でもかなり実施してきているところが多い。この辺で阿部知事さんの力によって実現していただきたい。せめて、子供たちは18歳くらいまでは無料にしてもらえないかと希望をもっている。よろしくお願いしたい。
平川事務局長:知事さんから一言お願いしたい。
阿部知事:本日は坂本会長はじめみなさんにお越しいただきありがとうございます。この福祉医療の話は県議会でもいろいろとご質問をいただいており、問題意識は持っているが、ひとつは国が志向している方向と各自治体がやろうとしている方向性が逆のベクトルになって、窓口無料化とかをやると国民健康保険の国庫負担金等が減額されるといった状況になっている。私は本来はこうしたそもそもの保険制度の仕組みは、国が作っている。長野県が窓口負担はこうしようとかといったルールを決めているのではなく全国統一的なルールで、そこのルールまで地方自治体に分権してもらえれば話は全く違ってくるが、国が自己負担を決めて制度を作っている中でその地方が独自に一定のことをやっていくのは良いが、今は正直各自治体の競争のようになって、自分が選挙で選ばれる立場なのであまりこうした言い方はしたくないが、選挙に出るときにはこうしたことをいった方が票が入りそうだといった人もなくはないのではないかと思っている。うちがやってもほかのレベルと比べればまだまだ足りないといった話になるわけで、財政がある程度余裕があるところはどんどんいくがそうではないところはなかなか進まないとか、或いは首長とか議会がやろうといったところはやるが、やらないところはやらないといった話は、ほかの制度は別だが、医療のように全国民があまねく関わりがあるものについてはいささか筋が違っているのでないかと正直思っている。私は横浜で仕事をしていたが、横浜でもこの議論はいろいろあった。東京が隣で東京の水準は極めて高い。東京にたまたま住んでいるのかほかのところに住んでいるのかでなぜ違うのか、地方自治や地方分権というのは私は必要だと思っているが、この部分は私は社会保障の基礎的な部分だと思っているが、その部分で差をつけている状況自体がおかしいと思っている。今回国は社会保障と税の一体改革をやろうといっているのでこうした時にこそ、国が目を向けなければいけないと思っている。知事会からも地方がやっていることにきちんと国が目を向けろと言っているが、厚生労働省はこのような地方が独自にやったものは我々が関知する社会保障制度ではないと感覚でまったく変わらない。みなさん是非こういうものこそ社会保障の中でしっかり位置づける必要があるのではないかと一緒に国にいっていきませんか。私はそれが一番望ましいと思う。とはいえ、県は何もしないのかというと、坂本会長から先ほどお話のあったこうした物事を考えるときに関係者の声は私は大事だと思う。この福祉医療の在り方の検討というと、この事業は基本的に市町村になるが、現場の視点で社会保障の在り方を考える懇話会といったものも作っているのでそういったところでぜひご意見を聞いたりする機会がつくれるよね(事務方より「はい」)。私はまず国の方向性がみなさんが求める方向性と今の時点では全く逆を向いているので国にもう少ししっかりと対応していただきたい。それは長野県がやっても東京都同じレベルをやるというのはかなり難しい話だと思うので最低ここまでは必要だということは国レベルで統一してもらうのと、少なくとも地方自治体がやっていることに対して補助金を減らすみたいな発想は変えてもらう必要がある。我々の方でもこの問題に対して全く問題意識を持たないわけでもないのでそうしたものについて全般的に社会保障改革が行われる中で我々は県としてできることは考えるし、県だけではできないことは国に求めていくのでそうした場で、こうした点で議論していかなければならないと思うので、皆さんのご意見を聞かせてもらって対応を考えることはしていきたいのでよろしくお願いしたい。
平川事務局長:各団体がきているが、今回一緒に署名を行った県労組会議の高橋さんよりお願いしたい。
高橋:日頃よりいろいろお世話になってありがとうございます。いま知事より話をきいて、細かなことまで精通されて検討されているのだとお話をきかせていただき感謝している。確かに国と地方の関係がねじれている。特に厚労省が2200億円の毎年の医療費の削減をずっとやってきて、政権が変わったので少しは緩和されているが、しかし依然として医療・福祉の関係では大きな壁というかハードルがあるという中での運営がされている。医療現場でいえば医師の不足やコメディカルの不足などいろいろな問題がある。なおかつ、知事が先ほど言われたように都会と地方では大きな財政力の格差がある。こうした問題があり今日制度が進められてきた。ここに改善できるところについては何とか改善していかなければならないといった考えを示され、それはまた現場の声を聴いたうえでということをいっていただいたので感謝申し上げる。この問題で私たちの署名は約18000筆集めたが、特に子供の問題や障碍者の問題というのは社会保障としてとらえていく場面が大きい。それだけではなく制度を変えるにあたっては医療現場と話をしなければいけない。私ども自治労などを通じて医療現場のみなさんとも話をしてきた。確かに現場のほうでいえばこれが無料化となれば現場の負担はかなり減るということがいわれ、ただし制度を設計したり、変えていくにあたっては県のほうが大きな負担をしょうのかなといった話は出されていた。しかし、少子化時代、格差是正を進めていく上ではこうした問題をきちんととらえて私たちも考えて声を出していった方が良いだろうということで取り組みをさせていただいた。組合員もかなり賛同をして署名に協力をしていただきこのような格好になった。本日は色々な団体がきているので現場の声を聴いていただきながら一歩でも前に出るような対応をしていただけたらと思っている。よろしくお願いします。
平川事務局長:障害者の立場から障害者運動推進協議会よりお願いします。
原(推進協):まずはお礼をいいたいが、前に知事にお願いした「しなの鉄道の話」、ポプラの会という精神障害者当事者の会と一緒にお願いして、3月より実現して我々喜んでいる。大きな力を知事さんをはじめとして県当局のみなさんに発揮していただき感謝している。また、新年度予算でも私どもの会が県民参加の政策づくりで医療的ケアの必要な子供たちの問題をとりあげたことで一部予算化をいただいてそれについても感謝したい。一番の主眼はこどもや障害者の一部負担の窓口無料化、また制度のあり方を検討する場合には是非親御さんの声を活かして欲しいということだが、それだけではわかりにくいので今日は要望書という形でプラスアルファの資料をもってきた。基本的な認識は知事さんと私ども変わっていない、日本の福祉は諸外国から見れば本当に周回遅れといわれている。一番基本は国の施策に大きな欠陥がある。いまだに国連の障害者権利条約すら批准できない。国内法をきちんと整備できない状態にある。我々は上部団体、全国団体があるので知事さんにいわれるまでもなく一生懸命国に働きかけをしている。逆に今の国を変えていくためにも地方の力、地方をきちんとした形にしていくことが大事だろうと、県議会からも国に対して意見書をしょっちゅうあげていただいているが、この福祉医療についても実際には多くの県、市町村が前向きな姿勢でがんばってくれているので県としても一定の方向を出すべきだろうと、それで国の制度を変えていくということがいいと思っている。具体的な要望事項だが、今日本の中で一番大きな欠陥は何かというと障害とか疾患は障害名、疾患名で制限列挙方式といって書き連ねる。手帳を持たない障害者、福祉医療などのいろいろなサービスを受けることができない障害者が山ほどいる。この方式が変わらない限りは基本的な問題は解決しない。諸外国では当然障害者は、子供もそうだが、医療費がかからないのは常識であり日本は明らかに遅れている。今、長野県でも19の町村が18歳まで無料化されている。我々が3番目になぜ18歳と書いたか。例えばその矛盾はすでに出ているが、今は病弱養護学校というのがある。そこに入院している子供、例えば小児慢性特定疾患のような一部福祉医療に浴する子供たちについては事業から費用が出る。しかし子供たちに一番増えている心の病気、発達障害には福祉医療は無い。入院はして・・・・もできた、ところが親は金を払いきれない。だからお金の切れ目が教育の切れ目となる。そういう例は多くは無いが実態としてはある。そうした細かなところまで実態をつかんでいただき、県として施策をやっていただくことが国を動かすことにもつながると思う。精神障害者の問題もこのあいだお願いしたが、運賃割引以上に大きな問題がこの医療費の問題だ。前にもお話したが、日本の障害者施策は戦争から来ている。被災障害者を中心に作られてきたので、医療費についても精神障害者は通院だけで入院には無い。だから私は仕事で一部の障害のある方を助けているが、我々の方からお金を出すのはほとんどが精神障害や発達障害の方になってきてしまっている。そのような非常な不公平さが出てきているのでそのことについても県のほうで心配りしていただければ大変ありがたい。ついでだが、資料の裏に日本障害者協議会の雑誌に難病の子供の特集が出ていたので目を通してこうした実態もあることを知って欲しい。難病などはたくさんあるが福祉医療の対象となっているのはごく一部だ。同じ疾患でも軽い方と重い方がいる、対象となっても軽い方、重くても対象とならないといったことがある。明らかに福祉医療を受けていない方のほうが大変だ。そうした矛盾が山ほどある。議論に載せていただき県でできる事業は是非進めていただきたい。
平川事務局長:子供もつれてこられているが、新日本婦人の会長野支部よりお願いしたい。
高橋(新婦人):私は子供が3人いるが、最近は病気が少なくなってきたが、少し前までは家族中で医者にかかることが多く、花粉症とか中耳炎で私と子供3人連れて病院に行くと毎回1万円くらいかかって、会計の時にはため息をつく。全国では償還払いのほうが少ないといった話を聞いたときは子供の分だけでも窓口負担がないことがすごく助かるということを感じた。署名を集める中でも、ある幼稚園の男性職員からも子供たちのために是非こうしたことをやって欲しいといった声があった。長野に引っ越してきたというお母さんからは財布の中身を気にせずに病院にいってそのまま帰ろうとしたら呼び止められてびっくりしたという。
阿部知事:東京だとお金はぜんぜん払わないからね。
高橋(新婦人):そうなんですよね。対象年齢などは市町村でまちまちだと思うが窓口負担についてはわかりやすいので県外から来た人には長野県の子育て対策が遅れているのではないかと感じてしまう方もいると思う。是非実現してください。いろいろと給食の放射線測定などをみても私は遅れているとは感じていないが、そうしたこともあるのでお願いしたい。
山口(新婦人):正直頭から無理だといわれると思っていたが、先ほどの知事さんの話を聞いて考えてくださることが良くわかったので一層の努力をお願いしたい。私も3人子供がいるがやはり窓口で多少なりとも払うのはそれがかさむと負担になるので無料化は実現したい。弱い立場の人のことを考えていただきたいと思う。国のほうに要望を出すときに協力できることはこちらからもしていきたい。今後ともよろしくお願いしたい。
小林(新婦人会長):今実際に子育て真っ最中のお母さんの生の声を聞いていただいたが、他県から来た患者さんも、長野県は子育てしにくいねなんていわれるとさびしい思いをしている。そのほか本当に頑張ってくださっているところについてはありがたいと思っている。この間、不況も続いているし、雇用の悪化もあり、子育てがしにくい状況の中で子供たちが病気になったときこそお金が無くても安心して診てもらえる状況を私たちは早くつくっていきたいと思っている。先ほど知事が国のほうへ一緒に言っていこうとおっしゃられたが、私たちの会でも40年以上国に向けて、医療費の制度化をお願いしますといった署名を毎年とっている。そうした中で、国はなかなかすんなりとやってもらえないこともあって、私たちも厳しいと思っている。しかし、国がやらないからといってあきらめてはいけないと各自治体が子育てしやすい県や市にしていこうとかなりの努力をしている。是非長野県も頑張っていただきたい。県議会でも一時窓口無料化が採択されたこともあった。新婦人の会員でも石坂さんとか和田さんとか県会議員にいて頑張ってもらい、窓口無料化が実現するということでとても喜んだ。長野市も塚田市長のときで試算もしてすぐに実現するといったところまで来たので決して窓口無料化は減額ということもあるが、県の予算の無駄というか、無駄はないかもしれないが、厳密にいろいろと検討していただければ・・・
やはり、優先順位をご検討いただき、本当に安心して子供を生んで育てられる長野県にしていただきたい。大きな期待が知事さんには寄せられているのでご検討をよろしくお願いしたい。いろいろな団体の方が、窓口無料化が大事だということでこうした気持ちがすごく広がっている。本日は労組会議の皆さんとも一緒に来れたのですごく運動が広がっていると私たちも嬉しく思っているのでよろしくお願いしたい。
平川事務局長:今回は直接阿部知事さんに署名を手渡し私たちの要望も聞いていただいた。是非ご検討をお願いしたい。先ほど話が出たが、乳幼児の制度化については私たちも毎年要望してきている。昨年は131万筆くらい出しているので、こうした国への働きかけを一緒にできればと思っているのでよろしくお願いしたい。
阿部知事:そうですね。あまりいうと政府の批判になるが、社会保障と税の一体改革といいながらこうしたことが話しに上ってこないこと自体が、子供手当ては作ったりなくしたりしている。日本の社会全体がどういった社会保障の制度設計をしていこうといったことを今本当に真剣に考えなければいけない。現場の視点で考える懇話会でいろいろ担当部局に資料を作ってもらったら、税や社会保障で所得の再分配をするが、子供の所得再分配がほとんどされていない。要するにお金が無い子供たちはやはりお金が無いままといった感じになっている。データとしては。子供たちにはいろいろな意味で機会が平等に与えられなければいけないと思うし、ただでさえ社会全体が格差社会になってい割れている中で格差の固定化といった話になってもいけないと思う。子供たちの医療費をどうするかは私も重要な視点だと思っている。ただ、そのときにこうした問題を所得の多寡によって考えていくのか、そうではなく社会あまねくの制度なのか、子供手当てはもともと後段の話でスタートしたはずなのにどうもそうなっていない。逆に今は所得の捕捉はある程度できても資産の捕捉はできないので、本当意味で厳密な意味で資産を含めた再分配は税とか社会保障をいくらひねくり回してもちゃんとはできないだろう。そうした社会的なインフラも日本には無い。消費税の話は将来的には私は消費税はあげざるを得ないと考えているが、社会保障のあり方をまずしっかりと構築してもらわなければならないと思っているのと、是非、みなさんと一緒に考えなければいけないのは、国も地方もそうですが、国はほとんど赤字国債で賄っているので、今の歳出を国へいっていいですねといって歳出を増やしても、それはまるまる子供たちの将来負担にいってしまう可能性もあるのでそれをどうするのか。今の世代が支えるのか、将来世代に先送りしてしまうのかを含めてしっかり考えなくてはいけないテーマだと思っている。皆さんとは問題意識を共有して、こうした問題には対応したいと思っているので是非よろしくお願いしたい。
坂本会長:知事さんの言葉を非常に有難く聞いたが、来年度予算にどれくらい子供たちの予算が組んであるかわからないが、知事さんのお考えに沿って、来年度は間に合わないかもしれないが再来年度にはこうしたことを検討してみたいというお考えがあればお聞かせいただきたい。
阿部知事:これから、新しい県の中期計画をつくっていく中でやはり、ひとつの大きな長野県の特色は健康長寿県だと思う。健康長寿県というとイメージはお年寄りが元気で長生きといった感じだが、健康長寿県であるということはやはり子供を含めて健康であるということだと思う。そうしたことをこれからの中期計画にしっかり位置づけて、本当に元気で楽しく安心して暮らせる長野県をつくるようにしたいし、そうしたものに沿って予算化もしたい。
平川事務局長:大変お忙しい中時間をとっていただきありがとうございました。引き続きまたこちらも要望を進めていきたいのでよろしくお願いします。(長野県保険医協会まとめ)
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