開会中の県議会に「すすめる会」が提出した「子ども・障がい者等の医療費の窓口完全無料化を一刻も早い実現を求める」請願が3月9日午後県民文化健康福祉委員会で審査され、「すすめる会」湯浅事務局長が意見陳述(写真)を行いました。
湯浅事務局長がおこなった意見陳述では、昨年末の阿部知事の「子ども医療費の現物給付化検討」の記者会見を歓迎し、県が主導して、一刻も早い実現を訴えつつ、請願の趣旨説明を行いました。その中で、請願項目に従って、第一に、今回の県知事の見直し発言を期に、福祉給付制度全体を拡充する観点から「所得制限なし、受益者負担金なし」の窓口完全無料制度の実現を切実な当事者の声を紹介しながら、訴えました。
二点目は、当事者の意見や要望を直接行政に反映させる機会の保障の重要性を述べました。当事者と家族に直接影響する事柄を当事者や家族抜きで決めることは、人権保障としての社会保諸制度の基本に係わる事項であり、行政担当者の見識に係わる内容であり、是非当事者参加を保障して欲しいと訴えました。
陳述のあと、日本共産党の高村議員から「医療関係者からの反応はどうか」「市町村議会の意見書採択の状況はどうか」の質問がありました。湯浅事務局長は、現在展開中の県知事への要請署名運動における医療関係団体の反応状況や市町村議会からは、7割を超える意見書が挙がっていると答えました。 尚、請願は10日委員会最終日で採択の予定です。
2017年3月9日長野県議会県民文化・健康福祉委員会 請願への意見陳述
福祉医療給付制度の改善をすすめる会
事務局長 湯浅 健夫
陳情団体である福祉医療給付の改善をすすめる会の事務局長の湯浅健夫と申します。私どもの会長の和田浩は飯田市にある健和会病院の小児科医師で、本日診療の都合で出席できません。私が、和田に替わって請願の趣旨を述べます。
まず、本委員会で貴重な時間を許可して頂き、委員長はじめ委員各位に感謝申し上げます。本日は、当会の副会長で長野県障害者運動推進協議会の原金二(はらきんじ)と同じく当会の事務局の原健(はらたけし)が同席しています。
本請願の請願事項は、「①子ども・障がい者等の福祉医療給付制度は、現行の自動給付方式をやめ、一刻も早く窓口完全無料にして下さい。②制度のあり方を検討する場をつくり、子どもの親や障がい者などの当事者を参加させて下さい」の2点です。
以下、その請願趣旨ついて述べますが、その前に、昨年末の阿部知事の「子どもの医療費の現物給付化に向けた検討をできる限り早く着手したい」旨の記者会見に対して、私たちは心から歓迎し、一日も早い実現を願っています。
私たちが、繰り返し長野県及び県議会に対して、一刻も早く県の制度として子ども・障がい者等の医療費の窓口無料化を要望するのは、以下の理由からです。ご存じの通り、福祉医療給付制度の実施主体は、市町村です。しかし、市町村単独でこの制度を導入するには、大きなハードルがあります。財政的には、新たに、不当な国からの国保の減額調整措置を受けること。実務的には、当該市町村の医療機関に限った制度にせざるを得ないこと。など煩雑さが伴います。
その点、県全体で対応すれば、県からの財政的支援が期待できることや実務的には、県下のすべての医療機関への統一的な対応が可能になり、県下すべての医療機関で窓口での支払いなく受診することが出来るようになります。こうしてこの制度における県の主導性は極めて大きいものがあります。私たちは、この福祉給付制度は、実施主体の市町村と県との共同事業であると考えています。こうした状況を踏まえ、今回の県知事の英断を歓迎しています。
さて、請願の趣旨説明を2点について、述べます。
まず第一に、私たちは、子どもや障がい者等現行の福祉医療給付制度全体を拡充する観点から、「所得制限なし、受益者負担金なし」の窓口完全無料の制度を一刻も早く実現して欲しいと要望しています。
そもそも、福祉医療給付制度は、国の医療費の自己負担の増加政策に対して、地方自治体が、独自の判断で独自財源をつくり実施している制度で、日本の社会保障・医療保障制度を補完する役割を果たしています。どうしてこのような制度が発足したのかを考えてみると、せめて子どもや障がい者などの社会的弱者が、経済的事由で医療機関への受診をためらうことなく、医療を受けことが出来る制度を確立することは、行政施策の中で優先すべき内容があると言うことです。また、そのことは子ども、障がい者等の当事者や家族にとっては、より切実な声であるということです。厚生労働省が公表した2012年の子ども貧困率は、16.3%で過去最悪を更新しました。豊かなはずのこの日本で、子どもの6人に1人は貧困で苦しんでいます。また、子ども貧困率に大きく影響を与えている、ひとり親家庭の貧困率は、54.6%で、実にひとり親家庭の半数は、貧困状態です。この「子どもの貧困」は「貧困の連鎖」を生み始め、社会に様々な問題を投げかけています。また、障がい者とその家族の生活実態は、深刻な状態にあります。
二つ事例を紹介します。一つ目は「勤務していた学校で、経済的に苦しい家庭の児童が風邪で休んだ時に売薬で済ませ、悪化させたことがありました。お医者かかるお金がなかったのです。あとから返ってくることは、分っていましたが、その場で支払うお金がなかったのです」私たちが窓口無料化を求めているのは、償還払いではこうした子どもたちを救えないからです。
二つ目は、「子どもが2人します。我が家では昨年窓口で2万8510円支払いました。そのうちも福祉医療給付で戻ってきたのは、1万6010円で、1万2500円が自己負担となりました」というものです。現行の自動給付方式では、月1レセプト当り500円の受益者負担金を支払う事になっています。この負担は積み重なると家計にとっては重いということを示すものです。こうした切実な声が数多く寄せられています。
尚、子ども医療費の自己負担金の徴収に関する県当局の説明の中で、都道府県段階の制度では、自己負担が「ない」県は9県のみと強調していましたが、実施主体である市町村段階では、2015年4月1日時点の厚労省調査でも、すでに約6割の市町村が自己負担金を徴収していません。
制度の拡充には、国からの国保の減額調整措置等の新たに財政負担が伴いますが、子ども・障がい者等が経済的な事由で医療機関にかかることをためらうことがないよう一日も早く医療費の窓口完全無料化制度を実現して下さい。
請願の趣旨説明の二点目は、こうした当事者の意見や要望を直接行政に反映する機会を保障することの重要性です。福祉医療給付制度の在り様は、その当事者や家族にとっては、「いのち」かかわる重大関心事です。当事者と家族に直接影響する事柄を当事者や家族抜きで決めることは、社会保障制度の基本、人権保障に反する事柄で、行政担当者の見識に係わる事柄です。是非、検討会への当事者や家族への参加を保障して下さい。
以上、2点にわたり、子ども・障がい者の医療費窓口完全無料化の一刻も早い実現を求める請願の趣旨説明を申し上げました。ご審議のほどよろしくお願いします。ありがとうございました。