貧困問題から窓口無料を考える(講演会より)

2017 年度すすめる会総会 講演会

貧困問題から窓口無料を考える

講師:和田浩医師(健和会病院副院長・小児科医師)

講演で和田医師は、上昇し続ける日本の子どもの貧困率と、貧困がもたらす子どもの心やからだへの影響について解説。統計をもとに、貧困が学力や健康状態にも悪影響を与え、家庭内での虐待要因になるなどを紹介しました。
その上で、長野県が医療費窓口負担について、県が中学卒業まで所得制限なしに現物給付としたことは大きな前進と評価しました。しかしレセプト1件当 500 円の自己負担金については、「行政には 500円くらいは払えるのではとの意見があるかもしれないが、500 円が払えない家庭は決して少なくない。この窓口負担が貧困層を医療から遠ざけることになる」と指摘しました。そして日々の診察で出会う経済的な困難事例を具体的に紹介し、「虫歯なのに歯科に行けず授業中に泣く子がいた」(佐久穂町)など、会に寄せられた多くの切実な声を「行政に生の声として把握してもらうことが大切」と語りました。
和田医師は更に、長野県の生活保護捕捉率は全国で 46 番目と低く、県下では 1 割の子どもが生保基準以下の収入にもかかわらず生活保護を受けていない実態があることを紹介。こうした実情からも「長野県が窓口完全無料とすることは特に必要性が高い」と強調しました。
また、「コンビニ受診が増える」との意見には、中学まで完全窓口無料を実施している群馬県のデータを示し、無料化後に時間外受診は逆に減少しており、無料化が安易な受診に必ずしもつながらないと指摘。群馬県では完全無料化したことで子どもの虫歯の処置完了率も全国と比べて高いことなど、自己負担のない安心感が治療の向上に結びついていると語りました。
現在県下では全市町村が中学校卒業まで、そのうち 65%の 50 市町村が高校卒業またはそれ以上を対象に福祉医療給付を実施しています。民医連調査では、県下には高校卒業までの給付を望む声が約 4 割あるとの結果が紹介されました。
和田医師は最後に「1件 500 円の自己負担金はたとえ払えたとしても大きな負担になります。障がい者も窓口無料が必要です。一刻も早い窓口の完全無料を求めていきましょう」とあらためて強調しました。
参加者からは「貧困の実態などをよく理解していなかったが話を聴いて改めて理解できた。完全無料化を早く実現させたい」「データに基づく分りやすいお話だった。早期実現を希望する」「窓口負担が貧困層を医療から遠ざけると聞いて、あらためて納得した。完全無料めざして継続して取り組む」などの感想がありました。

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